音楽を聴かない人
今の時代、中毒に関する意識が広まってきた。「中毒性のあるもの」は、必ずしも麻薬に限らない時代になったのだ。近年では、ドーパミン中毒やスクリーン中毒(スマホ依存)も問題視されるようになっている。
しかし、音楽中毒は見落とされているように思う。むしろ、音楽を聴くことは「好ましいこと」とされている。ほとんどの人、特に20代の若者は、音楽アプリでプレイリストを作り、道を歩く時も勉強する時も常に音楽を流している。ヘッドフォンをしていなければ、快適に外を歩けないという人さえいるらしい。
それは本来、同情の目で見られるべき「中毒症状」とほぼ同じものだが、意外にも世間では「かっこいいもの」として映っている。私個人としては、歌や曲をあまり聴かない。すると、「音楽を聴かない人なんて本当にいるの?」とか「あの歌手を知らないの?」と驚かれることさえある。
私は他人を見くびっているわけではない。実際、好きな曲や歌手が誰かということは、初対面の人と知り合う際の重要な要素だ。「この人は自分と同じジャンルが好きかな?」「知らない歌を教えてくれるかな?」と期待している人にとって、音楽を聴かない人は、やけに変人に思われてしまう。
カラオケに行っても、歌詞が分からず、文字を読んでもリズムが合わない。周りに合わせようと必要以上の努力を費やしているのに、結局あまり楽しそうに見えない人。そういう人は、周囲から「かわいそう」だと思われてしまっているのではないだろうか。
2週間ほど前、2人の友人と公園へ遊びに行った。日が暮れると、一人の友人が持ち歩き用の小さなカラオケマシーンを取り出し、順番に曲を選んで歌い始めた。友人の心遣いはありがたかったが、やはり困ったことが起きた。友人が「これはすごく有名だよ」と言って選ぶ曲は、どれも聞き覚えがある程度で、ほとんど知らない曲ばかりだった。自分以外の友達となら、もっと楽しく盛り上がれたのではないか。そう思うと、申し訳なさと寂しさが入り混じった気持ちになった。